(注意) 下記の文章を引用される場合は、
「玄野武人ホームページ‘If He Is Raped’(http://www.comcarry.net/~genbu/index.html)より引用」
と明記してください。


性被害者へのインタビューで注意すべきこと

 玄野タケト(男性サバイバー)   2006年記 
ホームページ:If He Is Raped   http://www.comcarry.net/~genbu/index.html

性虐待をうけた男性(男性サバイバー)のための自助グループを、2001年からはじめて6年目を迎えました。

日本でも一部の人々のあいだとはいえ、ようやく少年や男性も多数が性虐待にあっていることが理解されるようになってきました。

今後の日本の課題としては、性虐待に関した各種の統計・調査の積み重ねが必要な段階に来ているといえるでしょう。それも女性も男性も等しく調査対象とした本格的な統計や調査が必要だと思います。

しかし、性被害者(サバイバー)に対する調査・研究・インタビューには、さまざまに注意すべき点があります。

くわえて、2006年の現時点では、日本では性被害者へのインタビューにおける倫理や安全に関するガイドラインが確立しているとはいえないので、きわめて慎重に行わねばなりません。

ここでは専門職や研究者による面接や電話を使った「インタビュー」を念頭において、当事者として私が気づいたことの一端を紹介しましょう。

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性被害者がインタビューに応じようとする場合、実にさまざまな戸惑いや危険が生じます。

虐待の記憶を思い出すことの苦痛、自分のプライバシーが研究材料にされることの不安、セックスなど性にまつわることを話さなくてはならないことの戸惑い、自分の体験を性暴力の克服に役立ててほしいという使命感を感じる一方で、既往の心の傷が悪化するのではないかという心配などがそれです。

したがって、インタビューにおける「安全と安心の確保」は、調査側が最大限配慮しなくてはならない絶対の条件となります。

いうまでもなく、医療者や研究者などの専門職がおこなう検査・調査などの責任と倫理は、全面的に調査研究する側が負わねばならないことは、精神医療でも一般医療でも変わりがありません。

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ところで、性被害者でない調査員が、上に述べたような戸惑いや不安をただちに想像することは、なかなか難しいようです。また調査委員に被害体験があっても、それは個人的な一体験にとどまり、複数の被害実態や後遺症の多様性を理解できるわけではありません。

あらかじめこのような戸惑いや多様性を追体験できると、調査もより適切にできると思われます。

そこで、私は、上述のような被害者の戸惑いや危険を調査員に追体験してもらうために、調査員自身のセックスの体験を互いにインタビューしあうというトレーニングを通じて、性被害者の気持ちを疑似体験してみるという方法を提案しています。

この方法はじゅうぶんに安全を確保して行うべきですが、ただ実際に実行してみなくとも、心の中で想像したり、思考実験した結果をたがいに話し合うだけでも効果があると思われます。

調査員は2人で組んで、1人は質問する役を、もう1人はインタビューを受ける役を演じます。質問をする役の人は、「初めてのセックスはいつでしたか?」「自慰はどのくらいの頻度でしますか?」などと2、3の質問をします。

この時、質問された側は、けっして答えてはなりません。調査員といえども自分の性的なプライベートを開示することはトラブルのもとになるので、このことは必ず守ってください。

ここで感じてほしいのは、質問をする時、もしくはされた時、どんな気持ちになったかを調査員同士で話し合ってほしいのです。このようなトレーニングを通じて、自分の性的なプライバシーが研究という名目で公開されることや、性的なことを語るさいの困惑などを感じてほしいと思います。

さらに、性被害者に質問するときに何に注意しなくてはならないのか、安全はどうやって確保するのか、あるいはより細かな注意として、どんな声のトーンで尋ねるのが良いか、時間帯は昼か夜か、場所はどこが良いか、インタビューアーの性別は男性か女性かなど、いろいろな角度から被害者の気持ちを想像しながら話し合ってみます。

なお、注意を喚起しておくと、性虐待は暴力であるが、調査員の語っていることは愛情にもとづくセックスであるという違はしっかり認識しておいてください。トラウマの記憶を語ることと、通常の思い出を語ることの違いも学んでおいてください。

性被害者(サバイバー)はトラウマに関わるような記憶や感情を語ると、必ずと言っていいほど悪影響がでるものです。その程度は、一時的に具合が悪くなる場合から、死にたくなるなどさまざまです。

質問するということ自体がすでに侵入であり、辛い過去を再体験をさせるリスクを含んでいるためです。それゆえ、安全確保とインタビュー後のセルフケア、もしくは他者によるケアは欠かせないと考えておいた方がいいでしょう。

また、インタビューを受ける被害者が回復に取り組んでどのくらいになるか、どのようなリソースを持っているか、セルフケアはできるかなど、事前にアセスメント(評価)しておくとベストだと思います。

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さて、話題を変えて、女性の性被害者にインタビューする場合と、男性の性被害者にインタビューする場合に、何か違いがあるのでしょうか。実はいつくか配慮しなければならないことがあります。

そもそも、男性の性虐待の実態を調査するにあたり、男性に「レイプされたことがありますか?」「性虐待にあっていますか?」と尋ねたところで、「イエス」と答える男性は現時点ではほとんどいないでしょう。

したがって、「意に反した性交を強要されたことがありますか?」などと洗練された質問の仕方をしなければ、実態を反映した調査とならないことはいうまでもありません。

女性の性虐待にくらべ、男性の性虐待を強固に否定したり嘲笑したりする社会では、女性被害者と同じ質問を男性にすると、男性を暗に責める結果となり、したがって男性被害者の快復を妨げかねないことが往々にして起きます。

また、研究者や調査員はとかく女性にはしない質問を、男性の被害者にしたがる傾向があります。

たとえば、同性愛者であるか異性愛者であるかといった性的指向性や、加害行為の有無などを知りたがります。これらの質問もまた何の配慮なく発せられると、被害者を傷つける可能性があります。

このような質問は、「男性から性被害をうけた男性は将来、同性愛者になる」「性被害をうけた少年はみな加害者になる」などという「神話」(性虐待に関する誤った情報)がもとになって発せられるようです。

私たち男性サバイバーは互いに多くの仲間と話し合ってきた経験から、これらが事実を正確に反映していないことを知っています。しかし、逆にこの種の質問は、性虐待の実態、ジェンダー、特に「男らしさ」と性虐待の関わり、社会の偏見などを、学術的に明らかにするために必要であり重要な質問でもあります。

それでは、男性被害者の快復を妨げずにこのような質問をするには、どのような工夫がありうるでしょうか? 

その解決策の一つは、1問ごとに「次の質問はあなたの落ち度を指摘するものではなく、実態の解明のために必要なのです」などと確認したり、あるいは事前に男性性虐待の「神話と事実」についてレクチャーをしたりしておくことです。

それから、男性に対する専門的サポートが女性にくらべたら絶対的に不足している、というよりも皆無といっていい状況も問題になります。インタビューで調子を崩した時に、調査側が何のケアの体勢も用意していなければ、サポートのない社会に被害者を放り出すことになりかねません。

したがって、インタビューをする前に、調子を崩したときは誰がケアをするのか、その費用は誰が負担するのかを、あらかじめ取り決めておかねばなりません(信頼できるサポート機関の紹介でもいいでしょう)。

研究や調査にあたり、研究者は学術的好奇心や功名心を抱いているものですが、そのような研究者のニーズを優先した場合は、ときにたいへん不健全な調査となります。調査やインタビューはなんといっても、被害者の安全を保障し、そしてなによりも性被害者をエンパワメントする目的で行われるべきなのです。

調査を通じて、性被害者をエンパワメントするという視点こそ、もっとも重要で、そして本質的な視点です。このことはいくら強調しても強調しすぎることがありません。研究者は、調査を企画する前にこの視点を理解してください。

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性被害者への調査やインタビューでヒントや手本となるのは、学校や会社での集団健康診断や、薬害エイズの時の社会の対応です。

集団健康診断で病気が発見されれば、そのまま医療機関を紹介してもらって、再検査や治療へとつなげることができます。性被害者へのインタビューや統計調査でも、インタビューをきっかけにして虐待された過去を思い出したり、調子を悪くしたりしたとしても、そのまま回復やケア(治療)へとつなげることができる体制を整えることが必要です。

薬害エイズが社会問題化した時は、エイズ検査を無料で受けられる態勢を整える一方で、統計調査、研究推進、治療薬開発、拠点病院の整備、クライアントへのカウンセリングの提供、そして社会へ向けて正しい知識の普及や偏見是正や防止教育などを、包括的に行いました。

性暴力被害者への調査もまた、このような包括的な一連の社会システムを整えてゆくことが同時に行われることが望まれます。

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紙幅が尽きてきたので、私が気づいたその他の注意点をごく簡単に挙げておきます。

(1) 一般には、カウンセリングよりもインタビューの方が易しいように思われているふしがありますが、しかしインタビューは強制的に再体験させることがある上に、カウンセリングのような継続的な援助構造をもたないので、インタビューのほうが難しいと思っておいたほうが良いでしょう。

優秀な精神科医やカウンセラーなどの治療者といえども、そのままで優れたインタビューアーになれるわけではありません。

(2) 性被害者にとって性的な快復は重要なテーマですが、もし調査側が性被害者の性的な諸問題の知識がないままにこのテーマのインタビューをすると、たいへんな危険な生じることがあります。

(3) 原則として、友人や家族など親しい関係の者同士でインタビューをしてはなりません。これはカウンセリングを親しい者同士で行うことが禁忌とされていることと同様です。

なぜ親しい間でのカウンセリングなどが禁止されているか、わたしは素人なので詳しくは知りませんが、次のようなことは言えるでしょう。

親しい関係だとインタビューアーや研究者が、顔見知りの安心感からきちんとプロとしての役割を取らず、安全のための手続きや責任をおろそかにする可能性があります。

また心理的な距離の近さが悪影響を及ぼすこともあります。外科医は冷静な手術ができなくなるため肉親の手術はしないといいますが、それと似たようなことがあるのでしょう。

他にも、研究者が事前に被験者(インタビューを受ける側)についてなんらかの情報を知っていることは、学術的客観性をそこなうことになります。

この分野は意外と狭い世界なので、顔見知り同士でインタビューをする必要が出てくることもあると思いますが、そのような場合こそ安全の手続きを厳密にするために互いに契約し、インタビューもあっさりと短時間で行うようにします。その場で、雑談や他の話題に発展しないようにするべきだと思います。

(4) 治療者自身が治療を担当しているクライアント、入院患者、未成年者の被害者へのインタビューは、それぞれ慎重でなければなりません。一概には言えませんが、配慮やインタビューのスキルがない状況で、むやみに行なうべきではないと思います。

入院や通院しているクライアントは、自己の治療のために費用を支払い時間を使っているのであって、治療者が研究のためにクライアントの時間や費用を消費することはしてはなりません。

また治療者が自分が診ているクライアントにインタビューをした結果、互いの信頼関係が壊れて、治療が中断されたり、できなくなるようなことがあってはなりません。治療優先でなければならないからです。

(5) 当たり前のことなので上記で言及しませんでしたが、下記のようなことは必須です。

(6)インフォームドコンセントの際に、インタビューで話した内容は、インタビューアーが分析したり論評したりするだけでなく、他のさまざまな研究者により二次利用されることを説明すべきです。二次利用のされ方によっては、被験者は相当に傷つく場合があります。したがって、研究者などによって被害者の意にそぐわない分析が行われたり、傷つく可能性もあることを説明しておくべきです。また、口頭のみではなく、文書を示してインフォームドコンセントをしましょう。

(7)論文や報告書を発表する前に、被験者に原稿を見せてチェックしてもらい、了解を取るべきだと思います。 研究者は被験者のプライバシー、個人情報のコントロールを権利をおろそかにしないようにしてください。

(8)上記(5)のなかで、インタビューを行う場所と時間帯は、被験者(性被害者)に尋ねてみて、被害者自身が安全と考える場所と時間を選ぶのが原則です。

原則として、調査側には場所や時間を指定する権利はありません。調査側が安全と考える場所が、被害者にとって安全を感じられる場所となるとは限らないからです。

調査側がカウンセリングルームなどの個室を用意したときも、その場所で良いかどうか了解を取ります。被験者が指定した時間や場所が、たとえば深夜や寝室など不適切であった場合は、変更を促します。

(9) 被験者が質問に答えることが苦しそうであったり、不安そうなそぶりが見えれば、調査側もすぐに気がつくものですが、しかし逆に被験者が調子よくしゃべっているときにも危険が迫っていることがあります。

たとえば、被験者が使命感を強く感じているときや、質問者に心を許しているとき、顔見知りのとき、感情のコントロール感を失っているときなどは、性被害者はたくさんのことをしゃべろうとしたり、予定外の話題やインタビューと関係ない話題に話し込んでしまうことがあります。

インタビューがトラウマにかかわる記憶や感情の開示を促している場合、そのような逸脱は危険を伴います。また学術調査としても客観性をそこなうおそれがあるので、話題が逸脱したり拡散しそうなときは、調査側が制限するようにします。これは安全確保のためにも必要なことです。

予定外のテーマであるが調査上興味深く見逃せない話題が出てきた場合、もしそのままインタビューを継続すると判断したら、ひきつづき十分に安全確保に配慮を払うようにします。

(10) インタビュー後に調子の悪くしたケースがあったかどうかの報告にも、注意が必要です。性被害者はインタビュー後しばらくしてから、たとえば数時間から数日してから、調子が悪くなることがあるからです。性被害者はしばしば自分の気持ちを感じ取ることに障害を抱えており、そのために感情が遅れて出てくることがあります。

特に、過去を思い出す苦痛を回避するために感情を「麻痺」させて回答した場合や、インタビューに答えることが性被害者の使命だと感じてがんばって回答した場合などは、一見問題なさそうに見えても、その夜に悪夢を見たり、数日して新たな虐待経験を思い出すことがあり得るからです。

このようなケースはあまり多くはないかもしれません。しかし、インタビュー直後の影響を調べるだけは不十分と考えられます。

インタビュー調査の報告書や論文は、被験者の調査後の様子を報告する義務があるのが通例だと思います。インタビュー直後だけでなく、数時間から数週間してからも調子が悪くなった場合も連絡してもらい、それらも報告書に盛り込んだほうがより丁寧な報告書になると思います。またそうすることで、より性被害者の実態を正しく理解できる報告書になるでしょう。

(11) インタビューに当たって調査側はたいて録音を残すと思いますが、被験者もみずから録音(もしくはビデオ)をすることをお奨めします。被験者が録音(録画)を希望しても、特に断られることもないと思います。録音はインフォームドコンセントの時から録音します。ICレコーダーなら気軽に長時間録音できますし、電話を録音する機材も電気店で安く購入できます。

(12) インタビュー調査に応じようとする性被害者の方は、上記のようなインフォームドコンセントや調子を崩したときのケアなどについて、あらかじめ心構えや準備をしてから臨むほうがトラブルを避けることが出来ると思います。

インタビュー中も、自分の感情や境界線を常に感じ取りながら、危険だと感じたり恐怖感が沸いてきたらならば、インタビューのペースをゆるめたり、中断したりしましょう。また気持ちよく過剰に話しすぎる場合も、危険な領域に入っている可能性があることは上に述べた通りです。

インタビュー後に調子を崩した場合も、きちんと報告します。このような報告によって被験者が必要なケアを受けられるだけでなく、次回以降に統計調査を受ける他の被験者の安全に役だったり、研究をより実証的なものへと高めて行くためのデータとなるはずです。

(13) 上述してきたことを総括して言えば、インタビュー中、性被害者自身がつねにコントロール感を失わないように配慮するということが、インタビュー調査のポイントになると思います。

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わたしたちサバイバーは、使命感を持ちかつ調査スキルを備えた調査員や研究者が登場してくることを切に願っています。それが性虐待を克服してゆくために必要なことであり、かつそのような調査研究に協力することもまたサバイバーの使命であると思っているからです。

調査統計は、男性も性被害にあうことを社会に知らせる確実な証拠となります。また行政施策の根拠ともなります。現在の刑法は男性性被害を想定した法体系になっていません。いずれは強姦罪にしても、欧米同様に男性被害者を含めた法へと改正するために、最終的には政府系の統計調査を実施したいと考えています。

男性性被害について調査をしたいのでその安全な方法について検討したいという方は、わたしのホームページからEメールをくださればご一緒に考えてみたいと思います。また、インタビューを受けようとするサバイバーの方にとって、上記が参考になれば幸いです。   

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追記1 : 安全を確保した上で、より深いテーマで調査するためには、自助グループで調査を受けるという方法もあると考えています。この方法なら、メンバー間でケアしたり、質問の意図や不安について話し合ったり、上記で述べてような神話にとらわれなくてすみます。また男性性被害の実態により深く迫る調査ができる可能性があります。  

  

追記2 : 最近の性被害の統計データとして、日本の高校生を対象にしたアジア女性基金による「高校生の性暴力被害実態調査」(2004年)の調査があります。男女ともに調査対象としている上に、過去の全ての統計調査を概括している点も便利です。以前の調査より一歩前進しており、その点より良い調査となっていると思います。

倫理的な配慮も以前よりも一層するようになっています。ただ、それでもサバイバーの視点から見るといくつか疑問があります。

たとえば、性被害者の中には担任教師や同級生が加害者であることもあれば、性的いじめのように教室で被害にあっている男子がいる可能性があるにもかかわらず、教室でアンケートに記入させています。上でも書きましたが、アンケートに答える場所は本来は被害者自身が安全と感じる場所を選ぶべきです。

また、生徒に対し権力がある教師がいる学校でアンケートを配布するのも問題だと思います。ただ、これらの問題は調査側も指摘している通りです。

また、調査それ自体を受けることよって、傷ついたり調子を悪くした学生について調べたり考察したりすることが、不足しているように感じます。調査に余裕があればですが、調査自体に対する評価、たとえばインフォームドコンセントは十分であったかとか、性被害について答える際の不安の程度、教室で調査に答えることの是非などを尋ねる項目もあっても良いかもしれません。

研究者たちは統計調査それ自体によって被験者がどのくらい傷ついたかということは、心理的にあまり調べたくないのかもしれません。しかし、統計調査そのものによる傷つきを調べておけば、次回以降の統計調査はより安全なものとなるでしょうし、フォローの仕方もより適切になる可能性があります。

他にも、男子の性被害者が12〜20パーセントいるという調査結果が出たにも関わらず、フォローアップとして送付されたパンフレットは女子の被害を想定したものになっており、被害男子のための情報・ケアがされていません(別の形でフォローしているも知れませんが、、、)。

とはいえ、この調査は得ることの多い調査だと思います。

この調査は、下記のアジア女性基金からダウンロードできます。
http://www.awf.or.jp/woman/research.html

直接のダウンロードは下記の「高校生の性暴力被害実態調査」からできます。
http://appls.tosho.co.jp/awf/books/2831.html 

 

(この一文はある機関誌に掲載したものを一部改稿 2006年記)


 

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