「相談メールや相談の投稿をする前に」〜
〜男性の性被害者やその家族・パートナー・友人・専門職のみなさんへ〜
2009年 くろたけ


みなさん、こんにちは! 男性サバイバーのくろたけです。はじめに、すこし自己紹介をしておきます。

わたしは男性でありながら性的被害を受けており、1999年頃から、仲間たちといっしょに快復に取り組んできました。(サバイバーとは性暴力被害者を指すことばです)。

受けた性被害は、@家族から、A家族でない女性から、それに、B精神科医から性的搾取と研究搾取を受けています。このBの事件の加害者側には、別の精神科医や被害者支援を専門にしている弁護士も関わっています(『トラウマとジェンダー』金剛出版)。

このIf He Is Rapedは、男性性被害をテーマにしたサイトです。男性サバイバーおよびセクシャルマイノリティ(GBTLIほか)のための自助グループ「RANKA」(ランカ)や、性暴力をテーマにしたメールマガジン「IF通信」の発行、「男性に対する性暴力」や、「性被害者を支援する援助職らの倫理違反について」「平和学」についての「出前講座」も引き受けているのでメールでお問い合わせください。

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少年や男性の性被害について、当事者やご家族などから相談メールや相談の投稿を多くいただくものの、たいへん申し訳ないのですが、一人ひとりの相談にはとてもご返事に応じ切れません。

そこでまずは下記を参照してみてください。だいじょうぶ、男性性被害(男性にたいする性暴力やセクハラや性的いじめなど)に関する基本的な情報はこのサイト内や、紹介している書籍から入手できるように、すでに時代は変化しています。

わたしが過去の虐待を思い出した1999年ころには男性性被害について日本語で書かれた書物はなにもありませんでした。
また、2003年、男性性被害を「日本トラウマティック・ストレス学会」で紹介したいという精神科医から、性的搾取・セクハラを受けたときにも、このような専門職による性的搾取に関する情報もほとんどなく、この種の裁判もあまり起きてはいませんでした。

しかし今では、当事者(被害者)やその家族や理解者によって、少なからず情報や知識、体験が積み重ねられています。

ですから、皆さんは決して独りではありません。仲間はいます。

そして、わたしたち自身が交流し、分かち合い、工夫して、新しい知識やより安全な社会を創造してゆく努力や気持ちが大切なのだと思っています。

ここに書いたことはささやかな内容ですが、それでもわたしやわたしの家族・仲間たちの工夫や経験から生まれたことの一端です。
そのような若干の知識が役立つならばと思い、みなさんににこの一文をお贈りしたいと思います。

それから、メールや掲示板の投稿にはなかなか返事はできませんが、それでもかまわない、返事がなくてもいいですよという前提で、メールや書き込みをくださるなら歓迎です。
仲間や友だちになれるかもしれませんね。(^o^)
掲示板のほうもあまり書き込みに行かないので、ご了解ください。

なお、「出前講座」や学習会の講師などにはよろこんで応じますので、トップページからメールをください。

(注)まだ下書きなので不適切な内容を含むかも知れませんが、要望が少なくないのでとりあえずアップしました。


性暴力被害からの快復や、男性被害者のカウンセリングについて相談を受けることが少なくありません。

しかしながら、寄せられる相談の数が多く、とても個別にお答えする余裕がないので、わたしの知る範囲で若干のポイントを紹介しておきます。

@はじめに、「被害者は悪くない」(「あなたは悪くない」)ということを、どうぞ理解しておいてください。
性被害にあうと周囲や社会から被害者の落ち度として責められたり、自分でも自責の念や恥の意識にかられることがありますが、しかし被害にあったことは被害者の落ち度ではありません。
性暴力は加害者が存在しなければ起きませんから、加害者にこそ全面的に責任があります。

繰り返して申し上げますが、「あなた(被害者)は、悪くありません」。
お子さんなど親しい男性が性被害にあったご家族・恋人・友人の皆さんも、どうぞこのことを心に留めておいてください。

とりわけ、「男性に対する性暴力」について社会はなかなか理解を示しませんが、しかし実際には多くの少年や男性がいろいろな性被害にあっています。
男性に対する強制わいせつ事件も、例年、100〜300件程度が刑事事件となっています。もちろんこの数値は氷山の一角にすぎません。


A男性性被害に取り組むためには、最初に次の「男性性被害に関する偏見と事実」を理解しておくことは必須です。
  →「男性・少年への性被害の事実と偏見(神話)」:http://www.biwa.ne.jp/~genbu/myths.html


B私見では、トラウマとなるような性的被害の深い心の傷からの快復のポイントは、「安全と安心を確保した上で、繰り返し過去と感情を語る」というものです。少なくともわたしの経験はそうでした。
ただし、快復の過程やあり方は、人それぞれで多様です。

なかでも、とりわけ「安心と安全の確保」はきわめて重要です。心理的に安心できる環境を整えたり、再び性被害にあわないようにしたり、周囲の人たちからさらに傷つけられないような配慮が必要だと思います。
また、衣・食・住が確保されていることや、経済的な安定も必要になることがあります。

それから、被害に関連することを話すと、たいていその反動として、心理的に不安定になることが珍しくないので、それに対する支えを確保したり、セルフケア(自分で自分をいたわること)ができるようになることも大切です。


C快復のための具体的な方法に関しては、この10年間の間に書籍も数点出版されるようになったので、ぜひそれらを参照してください。男性性被害に関する基本情報は、これらの書籍から十分に入手できます。知識は快復のための重要な力です。
 →「男性サバイバーに役立つ文献」:http://www.biwa.ne.jp/~genbu/bunken.html

両親・家族・パートナー(配偶者)や恋人に向けて書かれた本もあるので、ぜひ手にとってください。警察や裁判について書かれた本もあります。


Dわたし自身の快復のプロセスの一端、手記は、玄野武人「明けない夜はない」(森田ゆり『子どもへの性的虐待』、岩波新書、34ページ以降)に載っています。参考になる箇所もあるかと思います。


E自助グループについて:
性暴力被害者(サバイバー)自身によって運営される「自助グループ」は、重要な快復のための一つのツール(道具)です。
男性性被害者(男性およびセクシャルマイノリティのサバイバー)のための自助グループとして、「RANKA」(ランカ)を行っています。
原則、最低年1回は開催しています。参加に関心のある方は、当サイトで発行しているメールマガジン「IF通信」に申し込んでください(トップページからメールをください)。
当事者(性被害者)でなくともメールマガジンは申し込めます。
 →RANKAのチラシ:http://www.biwa.ne.jp/~genbu/RANKAchirashi.doc

それから、自助グループは3人いれば始められます。思い切って始めてみてはいかがでしょう。続かなかったり、1回限りでも少しも問題ありません。
また、サバイバーのご家族や兄弟、友人のグループも作ることができます。
とりあえず2人だけで分かち合うことも意義あることでしょう。


F家族・パートナー・友人の皆さんへ:
お子さんや彼氏・夫・男友達など大切な人が性被害にあったり、性被害にあったと打明けられると、ご家族・パートナー・友人としての驚きも傷つきもとても深いものがあります。

そのようなとき、まずは被害者の痛みに共感し、あたたかく見守ってください。
被害者の痛みに理解を示し、「話してくれてありがとう」「あなたが悪いんじゃないよ」「あなたの話を信じるよ」というメッセージを伝えて行きましょう。

また、被害者をさらに傷つける「二次被害」をあたえないように十分に注意してください。
たとえば「どうして逃げなかったのか」「あなたにも悪い点がある」「男ならそんなことを気にするな」「復讐してこい」「犬にかまれたと思って忘れなさい」などは、二次被害発言の代表例です。

もしも、自分の子どもや家族が大きな病気や大ケガをした場合ならば、病気やケガの悪化を避けつつ、必要な情報を集めたり、病院で治療を受けたり、本人や家族が出来るケア(安静や食事やリハビリ療法など)をおこないます。
性被害からの快復もこれらと同様で、必要な知識を得て、快復のための環境を整え、悪化させるような状況を防止しつつ、良き援助者を探すなどして、温かく見守ってゆきましょう。

さらに、もし子どものかかった病気が難病や障害である場合ならば、同じ悩みをもつ人たちと出会って患者会をつくったり、専門医の養成・研究の推進・費用の公費負担を、国や陳情したりするでしょう。性被害の場合もこれと同じ活動を、今後、必要としているのです。

お父さんもぜひ、知識を得て、お子さんの力となってあげてください。父親ができることもたくさんあります。

そらから、ご家族・パートナー(恋人や配偶者)・友人など周囲の方の傷つきも深いことが少なくありませんから、どうぞご自身もまた十分にいたわってあげてください。時には、ご家族などにも支援が必要なることがあります。

◆警察や裁判に訴える場合も、くれぐれも被害者の気持ちを尊重してください。
周囲の人のみの判断で、警察や裁判に訴えないようにしてください。
このような場合、被害者に次のような3つの選択肢を示して選んでもらうとよいと思います。
@「すぐに警察に訴える」、A「今は訴えないが後に訴えたい」、B「警察には訴えない」。
@やA、もしくは警察に訴える可能性があるときは、かならず証拠を残しておく必要があります。
そのためには、「被害直後にシャワーを浴びない」で、警察に行って証拠を採取してもらうことが重要です。
警察ではなくて、病院へ行く選択肢もあります。ただし、いずれも男性性被害に理解がない可能性があるので、その心つもりをして行きましょう。
いずれにせよ、ストレスの多い状況下にありますから、被害者にたいし説明をきちんとする、被害者の安心感を最優先にする、被害者の嫌がることをしない、ことを心がけていただきたいと思います。


G援助職を探すには:
男性性被害者を支援できるカウンセラーや精神科医を紹介してほしいという相談をよく受けるので、ここで少しお話ししておきます。

目下のところ、男性サバイバーを支援した経験のあるカウンセラーや精神科医、それに弁護士は少ないのが現状です。そのような援助職を探すには、「口コミ」によって探すのが一番よいようです。

わたしの場合は、関東ならJUST(ジャスト)や斉藤クリニック、関西では女性ライフサイクルセンターで、それから性被害者のための電話相談で最初の情報をもらいました(クリニック名などはネット検索してください)。
もっとも当時は(もう10年近く前になりますが)、あまり役に立つ情報はもらえませんでした。

相談先で直接支援してもらえなくとも、他の援助職を紹介してもらったり、自分や家族・友人でできることを紹介してもらうことも一つの方法だと思います。また、性被害に関する論文や本を書いている人に尋ねてみるのも一つの方法です。

なによりも、性暴力の電話相談やクリニックで必要な情報が得られない場合でも、あきらめずに次を探すことが大切なポイントになると思います。

どうしてもカウンセラーが必要な場合は、女性サバイバーを支援した経験のあるカウンセラーのところへ、海外の男性サバイバーについて書かれた書籍を持っていって、この本を参考にしながらわたしを支援して欲しいと提案しつつ、カウンセリングを進めたことがあります。
しばしば、クライアント(性被害者)といっしょにカウンセラーも精神科医も弁護士も成長してゆくものです。

もう一つ重要なのは、自分たちで自分たちに必要な社会的支援を生み出してゆくということです。
わたしの場合は、2000年ころですが、当時はほとんど社会的支援がなかったために、他の男性サバイバーたち出会って、体験や気持ちを共有し合ったり、回復のために何が必要か情報交換したり、自助グループをはじめたり、海外から洋書を取り寄せたり、海外のサバイバーとネットで交流したり、社会に男性性被害者の存在を知らせるための活動(執筆やワークショップ)をしたりと、自分たちでできる努力をしました。
(これらのことは長い時間をかけて少しずつ行ったことなので、みなさんがこのようなことをすぐにできなくても、あせらないでください。まずは自分を大切にできる小さなことから探すことが大切です。)

男性性被害者のためのサポートはきわめて少ないのですが、しかしながら当事者(被害者)や家族が支援を求めなければ、支援は生まれてきません。
ドアはみずから叩かねば、扉は開きません。

どうか、くれぐれもご自身にとっても無理のない範囲で、そして自分の安全感を最大限に大切にしつつ、いろいろ工夫してみましょう。

◆カウンセラー・精神科医・弁護士・電話相談・児童相談所・教師・CAPなどの方へ:
援助職の皆さんも男性性被害について学習し、どうぞ対応できるようにスキルアップしてください。依頼があれば、わたしも講演や学習会のスピーカーに応じているので、トップページからメールをお送り下さい
なお、女性の性被害者を10人以上支援したことのあるカウンセラーや精神科医なら、男性サバイバーの支援について学びさえすれば、男性サバイバーも支援できるようになると思います。


H性虐待の防止のために、「CAP」(キャップ)のワークショップを、全国的に導入しましょう!
みなさんも、各学校に導入できるよう、積極的に働きかけてください。

子ども向けのワークショップは、就学前、小学校、中高の3種があります。
大人向けのワークショップもあります。子どもが被害にあったとき、大人が適切な対応ができるかどうかはきわめて重要なので、必ず大人ワークショップに参加して下さい。

J-CAPTA(ジェイ・キャプタ) http://j-capta.org/

CAPセンター・JAPAN (子どもへの暴力防止プログラム) http://www.cap-j.net/


I援助職たちの倫理違反について:
性暴力の被害者支援を専門にしている精神科医・カウンセラー・研究者・弁護士などの援助職から、さまざまな被害や搾取を受けることがあります。
守秘義務違反、暴力や暴言、セクハラ(性的搾取)、不正研究をはじめとする倫理違反がそれです。

実際に、2005年ころから、精神科医・カウンセラー・弁護士が、性被害者から裁判に訴えられています。性被害者のほうが勝訴し、援助職らに賠償命令が出された裁判も複数あります。

被害者の安全が第一ですが、このような倫理違反を社会の中で明らかにしてゆくことや、倫理被害の実態を語ってゆくことで、被害者支援の質の向上が望めるようになります。

倫理被害を受けたときは、直接、その援助職に傷つけられた旨や意見を伝えることが第一の選択肢となります。
不誠実な対応をする場合は、その上司や学会、保健所、倫理委員会や懲罰委員会、裁判や警察に訴えたり、仲介者を立てたりします。下記の共同ブログを参照して下さい。
 →【共同ブログ】「精神科やカウンセリングで被害にあったら!」:http://ameblo.jp/ethicsandrescue/theme-10009308994.html

わたしが精神科医から、性的搾取(セクハラ)と研究搾取を受けた不正研究は、一橋大学の精神科医・宮地尚子氏が、文部科学省の公費(科研費)で行った研究成果を収めた『トラウマとジェンダー』(金剛出版)です。
分担研究者の女性精神科医が研究のためのインタビューと称して、彼女自身のセックスやマスターベーションほかについて長時間語ったたうえに、深刻な健康被害などをこうむることになりました。
さらに、『トラウマとジェンダー』は、被害を受けた際のわたしのことばをそのまま収録しており、その後も対応も不誠実でした。
この事件では、性被害者支援を専門にしている女性弁護士からも、上記2人の精神科医に接触するなという手紙が送られてきました。(笑)
そもそも、性被害者支援を専門にしている援助職が性被害者を性的搾取した研究を出版すること自体が、あり得ない話です。
この『トラウマとジェンダー』問題、今なお未解決です。

今後は、二度と性被害者を搾取したり、国民の税金で不正な研究成果を出版しないよう、再発防止策を社会的に確立する必要でしょうね。
また、専門職から倫理被害を受けた被害者の人権や健康の回復のための社会的制度の確立も必要です。

◆援助職の皆さんへ:
援助職らがミスをした場合、逃げたり、ごまかしたり、嘘をついたりしてはなりません。誠実に訴えに傾聴し、謝罪し、クライアントの快復に努めなければなりません。
「仲間かばい」や「組織防衛」、弁護士を通じて接触を断る内容証明を送るなどの手段は、現実には、かえって状況を悪化させています。

もし、援助職が逃げたり泣き寝入りをさせたりすれば、性被害者に、元の性被害、倫理違反の傷、さらに倫理違反で泣き寝入りを強要した傷と、3重、4重の苦しみを背負わせることになります。
これでは本来の援助職のあり方からほど遠いあり方になってしまいます。

ミスを犯してしまったときは、第一に勇気をもって倫理被害者の話に傾聴すること、第二に被害者の立場にたってどうすべきかを考えること、第三に自己の援助職としての責任を思い起こすことが必要です。

自分のミスを認めることはつらいことでしょうし、同じ援助職の仲間に知られたくないという恥の意識も働くでしょう。
しかしながら、クライアントや被害者の利益を第一に考えるという援助職の本来の職務に立ち返って考えれば、自ずから解決策が見えてくるものです。

周囲の人たちもまた、けっして仲間かばいなどを行わず、ミスした援助職を孤立させることなく、本来の責任を果たせるよう励ましてゆくことが必要です。下記のフェミニストカウンセリング学会で話した内容を参照してください。
  → 「専門職から傷つけられたら〜倫理違反をどう解決するか〜」:http://www.biwa.ne.jp/~genbu/iryoukago/08femicoun.pdf
  → 「援助職の倫理違反の実態とその解決策」というテーマで「出前講座」をしています。トップページからメールで問い合わせてください)。

この箇所、いささか冗漫な文章となりました。(^o^)
性被害者支援をおこなっている専門職が、さらに性暴力被害者を傷つけることはあってはならないことだし、同時にわたしと同じような苦しみを精神科医などから受ける性被害者が二度と出てないようにと思い、やや詳しくお話しした次第です。


 

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